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Talk to SalesThe Japan Society of Mechanical Engineers
日本機械学会流体工学部門講演会講演概要集(2007.11.17-18,東広島)
Copyright ©2007 社団法人 日本機械学会
流体力学教育における一つの試み ー現象理解の重要性を求めてー
An Educational Method on Fluid Mechanics with Demonstration to Comprehend Fluid Flows
正 石綿良三(神奈川工科大学)
Ryozo ISHIWATA, Kanagawa Institute of Technology, 1030, Shimo-ogino, Atsugi, 243-0292
Key Words: Fluid Mechanics, Engineering Education
1. はじめに
流体力学を教育する際の苦労は昔からあったが、年々学生の質的な変化からさまざまな点で問題が増えてきた。元来, 流体は形がなく、捉えどころがないことから、流体力学を敬遠する学生も少なくなかった。さらに、仮想現実が氾濫する中で成長してきた最近の学生たちは実現象との関わりが希薄で、身近な自然現象への観察力や洞察力が充分とはいえない。このような時代であるからこそ実現象を理解することの重要性を伝えなければいけない。実現象に正面から向かい合い、問題の本質を捉えることから真の学問や研究が生まれてくる。このような考えを背景に、ここ数年、デモ実験を取り入れて、実現象の理解を意識した授業を試みてきた (1) 。
2. 問題の背景
まず、学生を取り巻く環境や流体力学の根源的な困難さ等を整理しておく。
2-1 社会的背景 学生は小さいときからコンピュータゲー ム等の仮想現実に触れて育ち、日常的な場面から自然現象に 接する機会やものづくり、またそれらを通じた観察、洞察や 創意工夫などの経験が少なくなっている。
また、学生は安易にインターネットから多くの情報を取得し、図書や論文などからの文献情報を敬遠しがちである。イ ンターネットには間違った情報、不正確な情報も混在してい るという落とし穴がある。また、基盤のしっかりした体系的 な知識のつながりや論理的な思考の積み重ねなどが構築さ れにくいという欠点がある。
電子メール・携帯電話に象徴されるように、他人との直接 のコミュニケーションが不足し、相手の表情や意図を読み取 れない学生も増えてきた。何か問題が発生しても、その場, その場で対処していけば何とかなってしまい、事前に計画を 立てずに行動したり、これから起こり得る事態を予測できな いなどの傾向も出ている。
2-2 流体力学の困難さ 第一に、流体の多くは目に見えず、何が起こっているのかが実感できにくく、つかみ所がなく、流体力学は理解しにくいと敬遠されることもある。
第二に、公式に代入して「正解」を出すことに慣れた学生は現象の陰に隠れている物理的意味などは気にも留めず、モ デルと現象との乖離がある。
第三に、流体には多種多様な流動状態や種類があり、流体 力学の守備範囲は広範多岐であり、学ぶべきことが多いと思 われている。
第四に、微分方程式、偏微分、重積分などを含んだ微積分は もちろんのこと、ベクトル解析、複素関数論など、高い数学 的能力が求められ、数学的な困難さがある。
2-3 教育環境の問題 多くの学生はより短時間で効率よく 高得点を取ることを目的としている。点数を取ることではな く、現象の本質を捉え、さまざまな原理を体系として理解す ることが重要である。
表1 流体力学の困難さを魅力へ転換
| 流体力学の困難さ | → | 流体力学の魅力 |
|---|---|---|
| 目に見えない | → | 神秘性 |
| 自在な変化 | → | 意外性 |
| 気ままな挙動 | → | 知的好奇心を刺激 |
| 多様性 | → | 広範な応用 |
3. 発想の転換
以上で述べた背景を踏まえると、打開策の一つは、問題の 本質をしっかりと捉えることから教育していくことである と考えている。そのため、流体力学の授業ではデモ実験等を 取り入れて、現象に接する機会を増やして興味を喚起させ、 なぜかを考える習慣を身につけさせるように心がけている。
前項で流体力学の持つ困難さについて述べたが、これらの マイナス面は捉え方によっては流体力学の魅力とも考えら れ、プラス面に転換できる(表1)。
4. デモ実験の例
授業内だけではなく、学生が家でもできるさまざまな実験 を提案してきた (2) 。いくつかの例を当日実演する予定である。
おもな項目は、流体の粘度、空気の質量、浮力,加速度運 動、翼の原理、ベルヌーイの定理、マグナス効果、運動量の 法則,ウインドカー (風上に走る模型自動車)などである。
5. 誤解されている流体力学
流れにはあっと驚くような現象も多く、一般の予想に反す るような動きをする場合もある。そのため、多くの一般向け 科学書やテレビ番組で取り上げられることがあるが、その際 の原理の説明が間違っていることが非常に多い (3) 。翼の原理 の有名な間違いも現存するし、ベルヌーイの定理の誤用も多 数ある。このような間違いが蔓延する原因を調べ、有効な対 策を模索している。
6. まとめ
学生を取り巻く社会環境、教育環境から、実現象との関わ りが希薄になっている。そのため、実現象を観察、洞察する 能力や機会に乏しい。デモ実験を導入することにより、授業 への興味を喚起し、現象の理解を助け、一定の教育効果が見 られた。実現象に正面から向かい合い、問題の本質を捉える という姿勢を身につける教育を実践していきたい。
引用文献
- 石綿良三, 現象理解を重視した流体力学教育の試み, 流れ, 26 (2007), 109-113.
- 日本機械学会編, 流れのふしぎ, 講談社, (2004).
- 石綿良三, 図解雑学流体力学, ナツメ社, (2007).
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